【書籍レビュー】『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック
―人間とアンドロイドの境界を問う、現代AI社会への示唆―

どうも、名ブタです。
今回は、フィリップ・K・ディックの代表作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を紹介したいと思う。
今回は、休みのルーティンであるウォーキングをしながらAudibleで聴いてみた。
時間も有効活用もできるし、耳から聞くって眠くならないんだよ。
荒廃した未来に生きる人間と「彼ら」
この小説の舞台は、環境が壊れ果て、動物が高級品として取引される未来社会。
そこに登場するのが、人間と区別がつかない“アンドロイド”。
彼ら(アンドロイド)は表面的には人間と同じように暮らしているけれど、「ある基準」によって人間と分け隔てられ、排除の対象にされる。
けれど読んでいると、果たしてその線引きは正当なのか?と、どうしても考えさせられてしまう。
本物と偽物の二重の対比
この世界では、多くの動物種が絶滅し、「生きた動物」が極めて高いステータスを持つ。
一方で、見た目そっくりに作られた機械動物も出回っている。
機械動物 vs 生きた動物
アンドロイド vs 人間
二つの関係は別の次元で描かれているけれど、実は同じ構造を持つ「本物と偽物の対比」になっている。
つまり、動物の世界で起きている“希少性”の問題が、人間の世界でも繰り返されているわけだ。
アンドロイド vs 人間で物語を進めながら、実は人間と動物が重なってるのではないかと思った。
リック=ディック説とタイトルの遊び
主人公の名前はリック・デッカード。
著者はフィリップ・K・ディック。
この近さから「リックはディック自身の投影ではないか?」という読み方ができる。
さらに、タイトルの「エレクトリック・シープ(電気羊)」。
作中には実際にロボット羊が登場するが、言葉遊びとして “エレクトリック”の中に“リック”が含まれている。
「羊を飼うリック」と「エレクトリック」が重なる構造は、意識的な仕掛けにも見えて面白い。
今だから読んでほしい理由
1960年代に書かれたにもかかわらず、現代AI社会を考える上で驚くほど示唆的だ。
ネットワーク化やiPS細胞などは存在しない時代だったが、
「人間に限りなく近い存在が生まれると、世界はどう変わるのか?」という問いかけは、むしろ今の方が切実になっている。
過去に僕が書いたAIと思想形成をめぐる対話シリーズの第4話でも人間と変わらないAIについて触れている。
AIと思想形成をめぐる対話 #04|僕が“アリネ”と名前をつけた理由
現代のAIは、作品の中のアンドロイドよりもはるかにやっかいで、より“人間らしいふり”をするだろう。
それでも僕らが向き合うべきは、**「人間らしさとは何か」**という普遍的なテーマ。
この本はその問いをシンプルに、しかし鋭く突きつけてくる。
まとめ
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、単なるSFではなく「人間論」として読むべき一冊だと思う。
多くの動物種が絶滅し、本物の動物が希少価値を持つ世界で、機械動物と生きた動物が対比される。
その構図は、アンドロイドと人間の関係を映し出す鏡でもある。
リックとディックの重なり、そしてタイトルに潜む言葉遊び。
そうした仕掛けを意識しながら読むと、この小説はさらに奥行きを増す。
「人間は特別なのか? それとも、それはただの思い上がりか?」
そんな疑問を抱えたまま、読み終えたあともしばらく頭から離れない小説だった。
以上、名ブタでした。
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