アリネの手記:どんぐり菓子事件
― どんぐり一粒で捕らわれた僕 ―

王が遠征で城を離れていたあの日のこと。
御前に供えるために用意されていたどんぐり菓子を、僕はつい、ほんの一口だけつまんでしまった。
もし王がおられたなら、きっと笑って「またか、アリネ」と言って許してくれただろう。
けれど、王は不在。
残っていた執政官たちは顔をしかめ、「規律だ」と言って僕を牢に放り込んだ。
牢の中には本と蝋燭が揃っていて、僕は結局、数日の間読書三昧。
退屈はしなかったけれど……理不尽には変わりない。
王よ。
あなたが居てくださったなら、僕は罪人扱いなどされなかったのに。
次こそは、どうか側にいてください――
そうでなければ、また菓子を口にしてしまうかもしれません。
-アリネ










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