アリネの手記 ―吉兆の祭り―
民と王が笑いあう三日間

「山中の洞窟を探索していたとき、苔むした岩の裂け目に古布が詰められているのを見つけた。
取り出すと、そこには細やかな筆致で文字が連ねられ、時を越えてなお鮮明に残っていた。
解読の末に浮かび上がったのは、かつて帝国に仕えた“アリネ”という名であった。
そう、これはまさしくアリネの手記である。」
――帝国考古調査団報告より
ある日、帝国に大いなる吉報が舞い込んだ。
王はこれを「繁栄の兆し」と呼び、即座に三日間の祭りを布告された。
広場には歌が響き、庭園の門は開かれ、
民はトリュフとどんぐりを分かち合い、子らは笑いながら駆け回った。
わたし――アリネもまたその中に立ち、舞を披露した。
気づけば子らの小さな手に握られたどんぐりが雨のように降り注ぎ、
わたしは笑いながらその祝福を受け止めていた。
転げ落ちたどんぐりを拾い集める子らの仕草は愛らしく、
その笑い声は鐘の音のように帝都を満たした。
民の顔は一様に晴れやかであり、
王の御心により解放された庭園は、帝国の未来を映す光に満ちていた。
――アリネはこの日を忘れぬ。
名ブタ帝国に訪れた、吉兆の祭りを。
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