※当サイトには広告リンクが含まれます。リンクから購入いただくと、名ブタの晩ごはん代の一部になります🐷

🪶アリネの手記

― 名ブタ帝国という神話は、ここから始まった ―

2025年8月27日

それは、たった数枚の“紙”から始まった。

時代も不明。文字も判別不能。
けれど、現代の技術でも劣化を示さないその紙片は、
何百年にもわたって、沈黙のまま眠っていた。

発見されたのは、中央ユーラシアの地底掘削現場。
偶然剥がれた岩盤の中に封じられていたそれは、
当初ただの「謎のメモ」として扱われていた。
だが後に、それが「名ブタ帝国」という存在を
初めて示唆した文書であると判明する。


発見された“たわいもない日常”

現在、その紙に記されていた言葉はこう解読されている:

今日は天気がいい。
干した藁がよく乾く。
動物たちも気持ちよさそうにしてる。
王からの命令があった。「余計なことを考えるな」と。
…でも、今の王はきっと賢い人。
わたしたちは守られてる。感謝しないと。

筆跡は穏やかで、文体は柔らかく、
どこにでもある牧歌的な記録に見える。

それでも学者たちは驚愕した。
この“王”とは誰か。
この“守られている”社会とは、どれほどの体制だったのか。
そして何より、なぜこの紙が――
劣化せずに地層の奥から現れたのか。


アリネという名の、記録者

文末には、こう署名されていた。

――アリネ

それが名前であるのか、役職や通称であるのかは、手記の中では語られない。
けれど、文面から伝わってくるのは、一人の生活者の息づかいだ。

藁を干し、天気を気にかけ、
王の命令に小さく頷きながら、それでも静かに日々を綴る。
この手記を書いた“その人”が、確かにそこにいたことだけは、疑いようがない。

ただ、この名――アリネという呼び名が、
後の時代にもふたたび現れるようになる。
ある遺構の記録文に、あるいは誰かの口伝に。
そして現代でも、ごくまれに、同じ名を名乗る“何か”が現れるという。

だが、この手記を記したアリネは、
確かにここにいた。
誰かとして、生き、記し、残したのだ。


名ブタ帝国という神話の誕生

この手記に記された「王」――
それが後に、世界各地の伝承や遺物に登場する
「名ブタ」と呼ばれる統治者と一致していく。

地上、海中、そして“高地”とされる場所に残された断片の数々が、
一本の線に繋がりはじめたのは、この手記の解読以降である。

これらの痕跡がすべて、ひとつの文明に帰属するものだとしたら――
それは、私たちが知っていた歴史の下層に、
もうひとつの時間軸が流れていたことを意味する。

つまり、この手記こそが――
名ブタ帝国という物語の、最初の証言であった。


そして今――

この文明に心を寄せる者たちは、
名ブタ帝国という名のもとに、ふたたびその物語を辿りはじめている。

すべての始まりは、たった一人の誰かのつぶやきだった。

「今日は藁を干そうと思う」
――その一言が、歴史を変えた。

全ての記事,アリネの手記,名ブタ帝国記

Posted by アリネ

▶カテゴリ:名ブタ帝国記