アリネの手記より:続・どんぐり菓子事件

牢に閉じ込められて三日目の夜。
本と蝋燭の光に囲まれながらも、僕の心はどこか落ち着かない。
罪を悔いる気持ちよりも、王に会えない寂しさのほうがずっと大きかったからだ。
ふと、廊下を歩く衛兵たちの笑い声が聞こえた。
「アリネはまたどんぐり菓子で捕まったらしいぞ」
「牢に入ってる間は、城の菓子が安全だな」
……僕は思わず頬をふくらませた。
笑い者にされるのは心外だ。けれど、事実だから何も言い返せない。
そのとき、カツン、と足音が近づいてきた。
扉の向こうから低い声。
「……アリネ」
王だ。
遠征からお戻りになったのだ。
僕は慌てて立ち上がり、鉄格子に駆け寄った。
「王!信じてください、僕はほんの……ひと口だけだったんです!」
すると王は、ふっと笑みを浮かべられた。
「知っておる。おぬしのことだ、そうだろうと思ったわ」
そして懐から一包みを取り出し、鉄格子越しに差し出された。
中には、見慣れたどんぐり菓子がいくつも詰まっている。
「……次は正々堂々、余と共に食せばよい」
僕はその瞬間、胸がいっぱいになって、涙で前が見えなくなった。
牢にいた数日間の孤独も嘲笑も、一気に溶けて消えていったのだった。
王よ。
あなたが居る限り、僕はもう二度と、こっそり菓子を盗み食いなどしません。
……たぶん。
(※次なる事件の予兆を残しつつ、手記はここで終わる。)









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